その笑顔は、歯切れのよい、きっぱりとした演説をする土井さんや、おはこの「MY WAY」を朗々と歌う土井さんではなく、カラオケで「五番街のマリー」や「百万本のバラ」を歌っていた土井さんの面影に近いものでした。
土井さんの「市民との絆」や「いま始まります女性の政治」という呼びかけに賛同し、そこに集った人たちに背中を押されて市議会議員となった私は、地方議員の端くれとして、一時、もの凄い感動を味あわせていただきました。
社民党のキャラバンカーの上から、厳寒の夕暮れ、じっと立ち止まって土井さんの到着を待っている、駅頭を埋め尽くす人たちの姿をみたとき、政治の流れが変わるかも知れないと思ったものです。大きな団体や業界に属していない、市民一人ひとりの手に政治が取り戻せるかも知れない、新しい政治の流れが生まれるかも知れない−。
あれから15年たち、私も社民党を離れ、あのとき一緒に動いた市民派の女性の地方議員の多くも無所属となり、地方議会の中で市民派議員はがんばっていても、国政の流れは変わっていないのが現実です。
「変えなければならないものは、変える勇気を。変えてはならないものは、変えない決断を」を貫こうとした土井さんは、憲法解釈を曲げて集団的自衛権を認めようとする今の政治状況をどんな思いで受け止めていらしたのでしょう。
今一度、自分が政治に関わった原点に立ちかえって、やらなければならないことは何か確かめて、次の世代につなげていきたいと思っています。