地検前行動に先だって行われた院内集会、会場となった参議院議員会館の会議室は、定員100名がすでに満席で、予備として用意したもう一つの会議室も、椅子に座れない人が出るほど、たくさんの人々が詰めかけました。何といっても、昨年の9月に東京地検地裁の「不起訴」という決定を受けて告訴団が審査を申し立てた東京第5検察審査会で、「起訴相当」とした議決書が公表されたことによって、希望の光が見えてきたことが大きな力になっています。
「検察は、起訴すべきである」と題した海渡雄一弁護士の司会による 古川元晴さん(元京都地検検事正、元内閣法制局参事官)と船山泰範さん(日大法学部教授)の対談は、とても判りやすく、改めて司法に今求められているものなのは何なのか、深く考えさせてくれるものでした。
船山さんは、上申書の新事実によって「具体的予見可能性でも起訴は可能だ」と指摘して、標記に引用させていただいた「刑法は何のためにあるのか。刑罰を通して、国民が安心して生活するために刑法がある」と話しました。
現在の刑法学会が世の中とずれているところがあって、たとえば花火大会で前年もケガ人が出ていたにも関わらず死傷者が出た事故では、それを回避する義務があるという結果回避説≠とることによって裁くことは可能、と解説。
古川さんは、「今まで敗訴となっていたのは具体的予見可能説≠ノ則っていたからで、津波予測はあってもその津波は確率上起こり得ないから想定外であった、と断じていたから」、「しかし、危険が業務を遂行している事業者は、合理的な根拠のある一般の常識としてある不安感に対して高度な注意義務を払わなければならないという危惧感説≠ノよって刑事責任が問えることを指摘しました。
船山さんがあげられた上申書の新事実というのは、本当に衝撃的なもので、それについては、上申書をまとめた海渡雄一さんから報告がありました。上申書の全文は,以下にあります。
https://drive.google.com/file/d/0B6V4ZwGwBEaxVkVtTFJ1SFV5WlU/view
今まで東電側が「想定外」としていた津波被害について、2010年3月に原子力保安院の審議官が原子力発電安全震災課長等に送ったメールが明らかになったことです。それは、過去最大の津波から想定される15.7m
の問題に議論が発展すると「評価にかなりの時間を要する可能性が高く、また結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある」とご注進しているものでした。
それを受けて審議官と東電役員の間で津波対策を先延ばしする協議が行われ、3.11を迎えてしまったのです。
つまり東電側が柏崎刈羽原発が停止して赤字が生じていることから、過大な経費を必要とする津波対策を後回しにした、という事業者の利益を優先してしまったことが、あの苛酷事故の原因であったことから、事業者の刑事責任を問わないというのは、司法として許されない判断だということが明確になってきたといえるはずです。
人の命よりも事業者の利益を優先したのは、「経済は人間を幸せにするためにある」という法人事業者としてのモラルさえ忘れた行為と言えないでしょうか。
午後2時から、東京地検包囲行動が行われました。東京地検は再捜査期間を、来年2月2日まで3カ月間延長しており、約250人の人々が東京地検が厳正な再捜査を行い、起訴するように声をあげました。
次いで場所を内幸町の東京電力本社前に移し、「サブドレイン汚染地下水の海洋放出計画の中止を求める要望書」を提出しました。
原子力建屋、タービン建屋周辺の高濃度放射性物質汚染水については、多くの識者が不可能な策としていたにも関わらず行った地下水の流入を防ぐための凍土遮水壁の効果が上がらず、次の手として打たれたコンクリート壁も未だに機能せず、制御の目処が立たないまま、東電は放射性核種をできるだけ除去して海洋放出する計画を進めています。これ以上、海洋に汚染水を放出することがどんな事態を引き起こすのかは明白なはずです。
さて、どのような回答がでるのでしょうか。
永田町から霞ヶ関、そして内幸町へと移動する道々、公孫樹の並木は黄葉も盛りを過ぎ、歩道を埋める落ち葉に秋から冬への季節の移ろいを感じた半日でした。