会場となった日本図書館協会の研修室には、学校図書館の充実のための運動を長年続けてきた「学校図書館を考える全国連絡会」に加盟する全国の団体の会員をはじめ、100人近い方々の参加がありました。
まず、東京学芸大学の山口源治郎先生の「現代教育改革の中の学校図書館」というテーマの記念講演がありました。
山口先生は、最近の教育改革の問題点を挙げながら、子どもたちの読書や学校図書館に関する政策について、
2001年に「子ども読書活動推進法」が制定されてから、国は、三度にわたって「子ども読書活動推進計画」を策定してきたこと、さらに、学校図書館整備計画も1997年に策定されたことについて解説してくださいました。
これは国際的な学力テストにおける日本の成績不振により、グローバルな人材育成のための学力向上を目指す一環として、読書活動の推進が掲げられたとのこと。しかし、目的はともかく、読書活動を推進し、学校図書館の充実をはかることで、子どもたち自身の中に、考え、探究する力を培うことが非常に重要であると指摘されました。
2014年に学校図書館法が改正され、地方交付税の中に、学校司書を配置する経費が算入されることになりました。
この経費は2校に1名の配置であり、あくまでも非正規職員を想定したもの、という不十分さはありますが、学校図書館に司書は必要であるということがナショナルミニマムとして公認された意味は非常に大きいとの山口先生の見解です。
これをバネにして、学校図書館の変革を行うのは、自治体の役割であり、地方自治体の政策は国の政策よりも変えやすいはず、と続けました。
各地からの報告の中で、新潟市が寺内の全校に168人の司書を配置するとともに、公立図書館との連携を深め、学校図書館に関する教育委員会の8課の連絡会議を設置し、学校図書館支援センターを4カ所設置しているという、中央図書館長さんのお話もありました。
自治体が子どもが育っていくための学校図書館の役割を重要に思うかどうかで、施策が大きく変わることを改めて考えさせられました。
山陽学園大学の永井悦重先生は、「学校司書の専門性とは何か」と題する問題提起の中で、「本を手渡す」「本との出会いをつくる」という、従来の認識から、「子どもたちの知る権利を保障する学校図書館の役割を果たす」というように学校図書館に対する認識が拡がっていることから、司書の役割を考えていかなければいけないという意味のことをおっしゃっていました。
そして自らの教師としての体験、学校司書としての体験から、学校全体がこの「知る権利を保障する学校図書館」という認識を共有し、授業づくりにおいても貫かれていること、教師と司書との連携ができることが必要であるとおっしゃっていました。教師であれ司書であれ、「これが真実だということを教えこむ教育ではなく、どうすれば真実を求めることができるのかを学ばせること、という歴史学者東山茂樹氏の指摘をひきながら、そのことが「教えられる子ども」を「学ぶ子ども」へと育てていくことにつながっていくのではないかと提言。
学校図書館の充実は、司書の配置についてどう取り組むかにかかっていることを再認識した研究会でした。