今回のゲストは、わらじの会の仲間、野島久美子さんです。
1歳のときのケガで障害を負った野島さんは、養護学校卒業後、自立のために中伊豆の施設に入ったものの、毎日富士山を眺める暮らしがいやになって一度自宅に戻りました。しかし、電動車椅子が手に入るまでの3年あまりは自宅に閉じこもる暮らし−。
やっと車椅子で外出できるようになったものの、家庭の事情でご両親が自宅を手放すことになり、施設への入居を強要され、着の身着のままで家出してわらじの会へ。27歳のときのことです。
以来、日常生活の大部分で介助の手を借りながら、独り暮らしをしています。
改めてその30年間の歴史をたどるお話を聞きながら、時間の重みを感じていました。
野島さんの独り暮らしからほどなく、重度の障害をもつ人たちが親元を離れて暮らすための生活ホームができ、その人たちの暮らしを支えるために、まだまだ制度がほとんど無かったため有料の介助システムを立ち上げました。現在そのシステムに加わっているメンバーは220人ほど。国の障害者支援制度はめまぐるしく変わり、それでも国の制度だけでは24時間介助が必要な人の暮らしを支えていくことはできません。
資格・年齢を問わず、自分ができることを、障害を持つ人の求めに応じて支援していく自前のシステムは、同時に地域の人々のつながりを紡いでいく場ともなっています。
だれかが行動し、声をあげ、それに共鳴する人たちがいて、地域ができていく、その中で私も支えられて生きてきたことを再認識しました。
お話の後、「それでもやっぱり障害を持つ人とどう接していいか分からない」という率直な感想を聞きました。つき合ったことがない人にとっては、そう思うのは本当だと思うのです。でも、近くにいる障害を持つ人とつき合ってみると、そんなことは杞憂だったと、きっと思うのではないでしょうか。
そして、ちょっと日常生活のテンポがちがう障害を持つ人との時間の中で、いつもとは違うゆったりした時間の流れを味わうことができるような気がしています。