オンデマンドバスについてはご存じの方も多いと思いますが、予約制の乗り合いバス、しかも、乗客の希望に合わせて自宅から希望の行き先まで移動が可能、というものです。
私は何度か議会でこのシステムについての研究を求めてきたのですが、概ね、「理想的なシステムだけれど、障害が大きい」というふうに受け止められている、というのが実感です。
それを、一福祉法人が取り組んでいるというのが驚きです。
健友会は、西部診療所を中心に、特別養護老人ホームやデイサービスセンター、老人保健施設、在宅介護支援センターのほか、小規模多機能の居宅介護や正気お徳用、コミュニティカフェ、配食サービス、共食の場、などのさまざまな事業を展開しています。川越市内でも、もうすぐ高齢化率が40%を超える地域にあって、理事長さんが、これからは施設ケアではなく、コミュニティケアを中心にしなければいけない、と考え、そのためには高齢者が行きたいところにいつでもいける環境が必要、と、東京大学のオンデマンドバスの実証実験に取り組んでいる柏市の事例をヒントにはじめたとのことです。
「高齢社会というのは、今までの『時間に追われた人が中心の社会』から『時間に追われない人が多い社会』への転換である」
というお考えで、事業に取り組まれているとのことです。
「お年寄りの立つ瀬のある場を」と、老人ホームの近くに有機栽培の水田を設け、入居されているお年寄りと地域の人たちが一緒に米作りをされているとのことです。「この地域は農業経験のあるお年寄りが多いので、稲つくりだったらお年寄りが若い人に指導できるんです」とのこと。
☆年間経費がなんと180万足らず
乗せていただいたオンデマンドバス「いどばた号」と右手にあるのが、アットホームな健友会のデイサービス「いどばた」です。
いどばた号は、健友会の会員の中で、オンデマンドバスの利用を希望する会員が登録して利用しています。約1400人の会員の中で、登録されているのは240人で、現在利用しているのは84人ほどとのこと。平均年齢は78歳だそうです。
☆年間経費が180万円たらず
驚いたのは必要経費です。
車両のリース代が63,6000円、運転士人件費が900,000円、ガソリン代が144,000円なのに対して、予約運行システム利用亮が100,000円とのこと。
これを実際に利用した人数で割ると、一人当たり1000円強とのことです。
対して川越市のシャトルバスは年間345万人弱の利用者に対して,士が年間24億3000万円弱、一人当たり700円強を負担しているのですから、もっと乗客がふえた場合は、オンデマンドバスの効率性も高まると思われます。
何よりも、自宅ー自宅前の道路の状況などによっては自宅近く、ということになりますが−、から自分の行きたいところへ、ほぼ自分の希望の時間に行ける、という利便性は魅力あるものです。
共食の場の利用者も、このバスの運行によって増えているとのことでした。
春日部市も含め、多くの自治体で「コミュニティバス」を運行していますが、運行時間と路線が限られている上、便数が少なく、利用者が減少して採算がとれず、そのためにますます本数が減らされたりするなどの悪循環に陥っている、というのが実態のようです。
☆従来のオンデマンドバスの問題を克服した東大方式
今までのオンデマンドバスがもっともうまく機能しなかったのは、オペレーターが予約を受付けて経路を作り、配車する、というシステムをとっていたことにあるとのことです。
東大方式では、予約を受けたら瞬時にコンピュータが判断して、受付できるかどうかを返信する仕組みになっています。
「いどばた」に備えられた予約インターフェイスの画面です。大画面で、高齢の方でも使いやすい画面です。
予約受付が終わると、確認のため、すぐにプリントされた予約表が出てきます。
このシステムでは、過去の移動のデータを集積し、実際の移動時間の解析を瞬時に行っているとのこと。
さらに、10分のゆとり時間を加味した予約受付のため、遅延に心配はほとんどないとのことでした。
そのほかいろいろな利点があるのですが、もっと詳しくお知りになりたい方は、以下のサイトをご覧ください。
http://asp.casv.jp/Rsvs/All.aspx
柏市では、この12月に、オンデマンドバスとレンタサイクルを組み合わせた実証実験を行うとのことです。
是非、試乗しに行きたいと思います。