2015年01月24日

縦割りから脱却できるかどうかが鍵を握る「生活困窮者自立支援制度」

 一昨年の臨時国会で成立した「生活困窮者自立支援法」がいよいよ来年度、といっても今年の4月から本格的に実施されます。昨日は「地方政治改革ネット」でその制度についての勉強会がありました。
 埼玉には何といっても、10年以上も生活困窮者の自立支援に携わってきた、NPO法人「ほっとプラス」の代表理事を務めている藤田孝典さんがいらっしゃいます。そして藤田さんは、民主党政権下で検討をはじめた厚生労働省社会福祉審議会「生活困窮者の生活支援のあり方に関する特別部会」の委員もされていた方です。

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 これだけの少人数の勉強会にいらしていただいたのは申し訳ないような気がしますが、それだけ藤田さんは、今後各自治体で制度が血の通ったものになるように、自治体の議会での議員の踏ん張りに期待されているように思われました。

 この制度は、年々増加し、今までの福祉制度からぽろぽろこぼれてしまっている、生活困窮者とされる方々に対して適切な支援が行われる制度を、と求め続けてきた市民団体の願いが、民主党政権の元で議論されることになり、その後政権交代があっても、増加の一方をたどる生活保護給付などの社会保障費を抑えたい政府の思惑とからみ合って、廃案になることなく法制度が整備されたものです。
 それだけに「生活保護に至る前の自立支援策の強化を図る」という観点だけで取り組まれる恐れもあります。
 日本の貧困率は16%と言われます。一方、生活保護受給世帯は200万世帯余、となると、生活保護を受給しても不思議はない生活困難な方の20%程度しか生活保護に結びついていないという現実を前にして、生活保護に至る前の自立支援策、というのは途方もないエネルギーのいる事業である、ということになります。
 加えて、生活保護を受給した後の自立支援という点も実は大切です。

 なぜこんなにも生活困窮に陥る人が増えたのか、というのは、一にも二にも労働環境の激変にあることは間違いありません。若い世代の三分の一が非正規雇用という現状に加えて、人件費を抑えるために行われてきたリストラ、さらに職を失うことが住居も失うことになる現実−。
 そういう中で、自尊感情を持てなくなり、精神的追いつめられたり、病気になったり、病気になっても医療機関を受診せずに重症化したり−、時には子どもたちの育つ環境も劣化したり−。

 今までの社会保障制度は、働けなくなって収入がなくなると生活保護、障害があったり重い病気で働けなくなると障害者福祉制度等、福祉制度別に選別した支援が行われてきました。その結果、制度を利用できるほど重度では無いけれど、かと言って自立するのはむずかしいトラブルを抱えた人たちに対する支援の制度はほとんどありませんでした。
 また制度そのものが縦割になっているため、重複した問題を抱えている人に対する支援は提供はできなかったきらいがあります。

 この4月から自治体で「福祉事務所」をもつ、全国900余の自治体では、『総合相談支援センター」を設置し、本人からの相談から総合的なアセスメントを行い、一時生活支援、就労準備支援・就労訓練事業、住居確保支援、家計相談支援など、本人のために必要と思われる支援プランを作成していかなければなりません。そして多分、自立に向けた歩みは、この支援策によって進む、という歩みではなく、一歩一歩と段階を経て進んでいくことでしょう。
 今までの縦割ではなく、そして決して役所の窓口の開いている9時〜5時ではなく、一人の人ととことん向き合い、支援を模索することが第一歩となるこの事業が、目的をかなえることにつながるためには、福祉行政の意識改革が、今こそ求められているのです。さらに、だからこそ福祉は専門職の配置が大切になります。国のメニューには人材育成も掲げられていますが、その人材というのは「制度を熟知した専門家」ではなく「ジェネラルソーシャルワーク」とされる、どのような状況にも対応できるスペシャリストでしょう。

 もちろん、行政だけでは回っていかなのは明らかです。今こそ、地域のさまざまな社会資源と連携しながら、大胆にフレキシブルに事業展開していくことが、鍵を握っているような気がします。
 
 ものすごく端折った報告になってしまいましたが、詳しくは厚生労働省のホームページ上に、今まで行われたモデル事業の紹介も合わせて掲載されています。是非、ご覧ください。

 生活困難を抱えた方と接点のある身として、地域の中でこの制度が育ち、熟していくために、声を上げていきたいと再確認した勉強会でした。
posted by ふくろう at 17:47| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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