11日の水曜日は、東武鉄道株式会社が障害を持つ人を雇用するために設立した特例子会社、(株)シンフォニア東武の北春日部事業所にお邪魔して、実際に働いている様子を見せていただきました。
この会社の従業員は75名、うち、障害をもつ従業員は48名で、指導員は16名とのことです。パートナーと呼ぶ障害当事者は、時給が最低賃金の1年契約の有期契約社員となっています。「福祉的就労ではないので、働く≠ニいうことの意味をきちんと理解してもらうようにしています」とのこと。
毎日、始業の前に行う朝礼では、
「私たちの仕事は職場を明るくすることです」
「私たちの仕事のやり方は、『あいさつ』『笑顔』『一生懸命の掃除・配達』で職場を明るくすることです」
と全員で唱和していました。
作業にあたっては、指示はできるかぎり具体的な言葉を使い、イラストや記号などで視覚的に理解できる工夫をしており、作業の内容をきちんと覚えるよう、自主的に練習する環境を整えています。
ベッドメイキングの担当者は、その日の予定表に示されたシーツ交換をする部屋の色を確認し、その色のシールの貼られたドアノブに、シーツ交換の札を下げていきます。
モップかけでは、モップを掛ける壁に貼られたシールに沿ってモップを動かし、次にモップに描かれたイラストのように、靴の脇に沿ってモップを引くことによって、N字にモップをかけていくことができる、といった具合です。
便器清掃の練習用の便器には、スポンジてこすっていく順序と方向が矢印で示され、掃除のし残しがないように作業できるようになっていました。
これらのこと細かな作業手順は、すべて写真によるマニュアル化がされていて、だれが指導しても同じ手順と動作で行えるようになっています。
「迷わせない・困らせない・不安にさせない」という方針が、こんな一つ一つの細かな配慮で貫かれています。
シーツ交換、毛布や布団のカバーの交換、ある作業は1人で、ある作業は声をかけ合って2人で、とてもきびきびと合理的に仕事が進んでいくのは、見ていてとても気持ちのよいものでした。清掃作業も同様です。
福祉的就労ではなく、一般就労として障害のない人と遜色のない仕事をすることができる、という自信と誇りが育っていくのは、地域で暮らしていくための可能性を広げていくのだろうと思います。
ただ、こうして働くためには、家族など、生活面の支援をする人たちが不可欠であること、契約社員という雇用形態では、なかなか自立して暮らしていくことは困難なことなどから、手帳を取得して年金や公的な支援を受けることができる人でなければなかなか難しいと感じました。
障害をもつ人の自立のためには、就労と生活支援と経済的な支援、セットで施策と整えていく必要性を痛感します。
14日(土)は、越谷青年会議所の月例会での講演とパネルディスカッション、「障害者就労と地域おこし〜農・福〈福祉)・商の連携による新たな社会システムを創る〜」に参加しました。
県立大学教授の朝日雅也先生の基調講演では、障害者の就労形態が多様になってきていること、障害者雇用は着実に伸びていることが示されましたが、一方で、その収入があまりにも低い現状も述べられました。
障害者雇用促進に関する法律が整っても、経済活動と福祉支援の廉価医は、まだまだ壁があるのが現実で、それを可能にするのは、当日発表のあった社団法人と株式会社とが連携している新たな組織や、越谷青年会議所のような地元の決して大きくない事業所の、農業も含む地域資源を視野に入れた新たな取組かも知れないと思います。
さまざまな場で様々な人たちが障害を持つ人が働くことを考え、自分のできることから一歩ずつ取り組んでいくことから開ける地平があるのでしょうか。